手術後のリハビリ

リハビリを始める時期は、手術後翌日から行えるものと、 ドレーン(手術後にリンパ液や血液をそとに出すための管)がぬけた日から行うリハビリがあります。ドレーン(管)がある間は、腕を横にひらくような動作は避けましょう。手術していない方の腕や肩は普通に動かしてください。また、手術翌日から病院内を散歩したりするなどして、起きている時間を増やしてゆきましょう。

手術翌日からできるリハビリ

グーパー、肩まわし

ドレーン(管)が抜けてからできるリハビリ

滑車運動

最初は少し動かしただけでも、「ひっぱられて痛い!!」と感じられると思います。医師や看護師の指導のもとでリハビリを行ってゆきましょう。定期的にリハビリが出来るように習慣つけるとよいですね。 リハビリを行う時のこつは、「顔をしかめるくらい」の痛みを感じるほど動かするのではなく、「ちょーっと痛いけど、おしゃべりできる」くらいの程度の強さのリハビリを、休みながらちょくちょくとすることです。我慢しながらやるのではなく、ゆっくりと深呼吸しながら(息をとめてしまうのではなく、息を吐きながら動かしてくださいね)、少しずつ動かしてゆきましょう。


リンパ浮腫について

腕を動かした時につっぱるような痛みがあったり、時々手術のあとの傷がちくちくと痛んだりするのは、時間の経過とともに楽になってゆきます。半年あるいは一年の単位で様子をみてゆくとよいでしょう。
リンパ郭清をした人は、手術した側の腕の裏側や脇から背中にかけてしびれが残ったり、重く感じられたり、あるいは触っている感覚がなかったりするかもしれません。これも時間はかかりますが、日にちがたつとずいぶん和らいできます。

すこし心配なのは、リンパ浮腫とよばれる腕のむくみです。 脇の下付近にあるリンパには、腕やその側にある上半身の表面のリンパが集まってくる「集合場所」のような役割をしています。 手術のためにどうしてもリンパ管を切断したり傷つけたりしてしまいます。通常は、新しいリンパ管が再生したり、新たな流れが出来たりして、リンパの流れは再び取り戻されるのですが、何らかの理由でこの流れが滞り、本来の流れとは反対に逆流したり、滞ったりすると、腕が重たく感じられたり、ぴりぴりと痛んだり、腕がむくんだりすることに気がつきます。 細胞や組織のすきまに組織間液が過剰にたまった状態、つまり静脈やリンパ管で吸収されたり、運搬・排除される量を上回ることでいわゆる「むくむ」状態になるのです。
リンパ管に直接とりこまれず組織間液に残った高タンパク成分(リンパ液はもともと体内にある血液の成分から作られます)などは、白血球の一部で処理されたのちにリンパ管に吸収されるのですが、リンパの流れが障害されることでそのまま滞ってしまい、また白血球の機能も低下するため、タンパクが組織間液に残されます。そのために、腕がむくんでやや「かたい」感じになるのです。
なぜ、これがおこるのか、あるいはどうのような人に起こるのかなど、詳しいことは明らかではありませんが、放射線治療をした人や太っている人に多いとされています。元にもどることもありますが、一度リンパ浮腫になると、上手に付き合うことが必要になります。


リンパ浮腫を予防するために-セルフケアー

少し重いものを持った後や、手術した方の腕を長い時間使った後は、腕を心臓より少し高い位置において休めましょう。 夜休む時には、手術した側の腕は10cm程度の高さのクッションや枕で、高めにして休みましょう。
手術した側の腕を日焼けをすることや、虫刺されなどにも注意しましょう。ガーデニング(庭仕事)や炊事の際には手袋をするなどして気をつけておくとよいでしょう。
肩をまわす(特に後ろ回し)運動は、鎖骨の下にあるリンパの集合場所を刺激するよい運動です。
しめつけ感のある下着(ブラジャー、ストッキングやショーツなどウエスト周りをしめつけるものも含みます)をつけるのは最小限にしましょう。出来れば避けてください。夜休む時には、はずした方がよいでしょう。
適度な全身運動(ウォーキング、散歩、水中で行う運動など)はリンパ浮腫の予防と軽減に役立ちますので、やってみましょう。

手術した側の腕の感覚は、手術していない側の腕に比べると鈍いのが普通です。日ごろから、手術しない方の手のひらで手術した側の肩から二の腕、肘、腕を軽くさわる習慣をつけましょう。この時、背中のほうまで手を伸ばしてさわっておいてください。 セルフケアを行ってもリンパ浮腫の改善がない時や気になるときはご相談ください。


日々の生活について

「必ずこうしたほうがよい」という食事方法や食材はありません。バランスよく、腹八分目をこころがけて、楽しんで食事をするようにするとよいでしょう。 乳がんの経過に影響をあたえるのは、「肥満」です。特に「ホルモン感受性のある乳がん」と診断された人は、体重の増加には注意が必要です。 また、定期的に行う軽い運動は、肥満の予防とストレス解消にも有効です。まずは20分程度の散歩やウォーキングなどからはじめましょう。自分にとって必要な運動量に関する指針が厚生労働省から出されています。 おしゃべり、お買い物、映画鑑賞、ヨガ、ストレッチなど、今まで楽しめていたことは、続けてやってゆきましょう。

下着選びのヒント

乳房温存術をうけられた人で、手術前の乳房と形やボリュームがあまりかわらない人は手術前に使っていたブラジャーがそのまま使えるでしょう。 しかし、乳房の変形が気になる人や乳房切除術をうけた人は、専用のブラジャーをつけることでかなりカバーすることが出来ます。ワイヤーが痛かったり、締め付け感が気になる人もいるかもしれません。
特にリンパ隔清をうけた人は、ブラジャーや下着のしめつけを避けたほうが賢明でしょう。このような場合にも、専用のブラジャーが必要になります。

ブラジャーは、試着をしてから購入することをおすすめします。また、治療の経過にともなってサイズがかわるかもしれません。まとめ買いを避け、サイズ調整などに応じてくれるか確認をして購入しましょう。

性生活

性生活のあるなしが、乳がんの経過に影響することはありません。たとえば、手術後まもなくはそんな気分になれなくとも、あなたとパートナーがその気分になったときが、再開する時期だと考えてください。 ただ性欲や性感は、抗がん剤治療やホルモン治療の影響はもちろん、精神的なものからも大きく影響をうけます。手術後や治療中は、性欲や性感が変化することをパートナーに伝えておくことも必要でしょう。 また、再開当初からうまく性交することにこだわらずに、手をつなぐ、からだに触れるなどのスキンシップを大切にするとよいかもしれません。 抗がん剤治療やホルモン治療の影響により、性交痛がある場合があります。多くの場合、パートナーにそのことをきちんと伝えて、配慮してもらうか、膣潤滑ゼリーなどを使用すると楽になることがあります。 抗がん剤治療をしている人は、白血球や血小板などが低下する時期には性交は一時的に避けたほうがベターでしょう。